夢・希望を育む教育のデザイン (改 -JEDIー)

多忙感? -真の課題は?①-


多くの先生方が多忙感を抱いていることは、これまで幾度となく報道されています。にもかかわらず、いまでも報道が続いていることは、多忙感の改善は喫緊の課題であるにもかかわらず、有効で具体的な改善策がとられないまま今日に至っていることを示しています。

そんな状況が続く中、栃木県教育委員会が「教員の多忙感に関するアンケート調査(検証)」を実施し、平成24年2月にその報告書が公表されています。
http://www.pref.tochigi.lg.jp/m01/education/kyouikuzenpan/kyouikuiinkai/documents/taboukan-kensyou.pdf

その詳細は報告書(上記アドレス)に譲るとして、報告書にある次のグラフは「教員の多忙感」の本質的な課題を明らかにしているように思います。tabou1

先生方は、「多忙感を強く感じるとき」の第1位に、「予定外の用事が入ってきたとき」をあげています。日常の教育業務はまさに煩雑でありながら緊急性を求められる場面が連続していますから、そこに予定外の対応を迫られる状況が入り込むことは、多忙感を助長させます。

そして、第2位に「ずっと多忙な状況が予想されるとき」を上げているのは、先生方が「多忙感」を常に感じている証左でもあります。

さて、第3位の「必要や意味を感じない仕事のとき」、5位の「自分がやりたいようにやれないとき」、6位の「どう処理していいのかわからないとき」、7位の「周囲の協力が得られないとき」の回答を合計すると、なんと110%にもなってしまいます。

ここに大きな問題が潜んでいます。

第3位の「必要や意味を感じない仕事のとき」は、その教育的な業務の意味や価値が見いだせないままその処理に取り組まざるを得ない先生方の姿が浮かんできます。
第5位の「自分がやりたいようにやれないとき」や、第6位の「どう処理していいかわからないとき」は、管理職からの一方的な指示や、その逆に担当者任せになって上司(管理職)からの明確な指示がないことを連想させます。
そして、第7位の「周囲の協力が得られないとき」は、学校という職場の組織力の弱さを露呈しているようです。

でも、その一方で、「忙しくても負担を感じないとき」はどのような場面かという質問には、次のように回答しています。
tabou2

なんと、回答の第1位は「やりがいを感じるとき」です。そして第2位は「児童生徒のためになると思えるとき」です。
この回答に、先生方の教師としての真摯な姿勢を感じざるを得ません。いくら多忙でも、「やりがい」を感じることができたり、「児童生徒のためになる」と感じられれば、多忙感はあまり感じないというのが、先生方の真の思いなのです。

ここに、「多忙感」の改善のヒントがあります。
先生方が感じている多忙感を改善するためにまず取り組まなければならないことは、学校マネジメント・教育マネジメントの改革なのです。それは、教育行政担当者や校長を代表とする管理職が頑なに固執している従来のマネジメント・マインド(管理・監督を基盤とした効率化を目指すマネジメント・マインド)を転換することです。

先生方が「やりがいを感じる」ことができるのは、管理職層からのサポートであり、力強いコミットメントであり、的確な指示や指導であり、未来への方向性を示してくれることが必須なのです。

このアンケート調査は、先生方は日常的に多忙な状況に置かれていることを示しながら、組織マネジメントのイノベーションが「多忙化の現状」を解決できる可能性を秘めていることを示しています。

「多忙感」は確かに教育現場を覆っていますが、それは「現場を覆っている『徒労感』」が姿を変えて出現しているということではないかと思います。

多くの先生方が、「子ども達の育成」を心から願い、教師としての全精力をその育成に傾けようとしているときに、意図やねらいが不明確な業務に力をそがねばならない状況が、教師に多忙感を抱かせていることに注意し、組織マネジメントの抜本的改革(学校経営イノベーション)こそが、教師の多忙感を低減させることにつながっているのだということを理解しなければなりません。

「多忙感」がいっこうに改善しない原因の一つが、「徒労感」であるとすれば、業務量の削減を図ると共に、「やりがい」を感じることができる経営マネジメントへと転換することで「徒労感」を改善することが、真の解決策になるように思います。