日本教育デザイン学会 ーJEDIー

新学習指導要領を読み解く(2)


◯「新学習指導要領を読み解く(1)」で述べたように、新学習指導要領を理解するためには、改訂の背景を知る必要があります。

◯そこで本シリーズでは、新学習指導要領が告示される約3ヶ月前の平成28年12月21日に中央教育審議会が答申した『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について』を読み込み、図解したいと思います。


答申は、次のような「はじめに」で始まります。

◯キーワードを抜き出してみましょう。
 ・この140年間、・・・我が国の教育は大きな成果を上げ、蓄積を積み上げてきた
 新しい時代にふさわしい学校教育の在り方を求めていく必要がある
 ・2030年の社会、そしてその先の豊かな未来
 ・一人一人の子供たち(への期待?)
   ・自分の価値を認識する
   ・相手の価値を尊重する
   ・多様な人々と協働しながら様々な社会変化を乗り越える
   ・よりよい人生とよりよい社会を築いていく
 教育課程を通じて初等中等教育が果たすべき役割を示す
子供たちの成長を支える教育の在り方も、新たな事態に直面している

◯答申に示されている「はじめに」の最初の数段落を読んだだけでも、今回の改訂が、今までの改訂と大きく異なった大改訂であることがわかります。特に、「新しい時代にふさわしい学校教育の在り方」を検討し、「子供たちの成長を支える教育の在り方も、新たな時代に直面している」との認識に立ち、「教育課程を通じて初等中等教育が果たすべき役割を示す」という文言は、答申をまとめた中教審委員の方々が抱いていた危機感、教育への熱い思い、何としても教育を変えていくという決意を感じます。

◯もう少しキーワードを抜き出してみましょう。
 ・学校を変化する社会の変化に位置付ける
 ・学校の中核となる教育課程
   よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標
   ・学校と社会とが共有する
 それぞれの学校において
   ・必要な教育内容をどのように学び
   ・どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを明確にし
   ・社会との連携・協働によりその実現を図っていく
 「社会に開かれた教育課程」を目指すべき理念として位置付ける
 ・これによって、教職員間、学校段階間、学校と社会との間の相互連携を促す
 ・学校種などを越えた初等中等教育全体の姿を描くことを目指すものである

「学校を変化する社会に位置付ける」という文言もこれまでにない言葉ですが「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る」という言葉は、学校教育へのこれまでにないほどの大きな期待を示しているのではないでしょうか。それは、「社会の要請に教育が応える」という図式を「教育によって新たな社会を創る」という図式へと大転換することでもあります。

◯そして、そのような思いが「社会に開かれた教育課程」へとつながっていきます。「社会に開かれた教育課程」という言葉は、今回の学習指導要領の改訂の最も重要なキーワードであり、この段落に示されている文章の多くは、新学習指導要領の「前文」でも読むことができます。

◯さらに重要なことは「社会に開かれた教育課程」を、これからの教育が目指すべき理念として位置付ける」ということです。辞書で「理念」という言葉を調べると、「物事の本来あるべき状態」と説明されています。

◯では、「社会に開かれた教育課程」のどの部分が理念につながるのでしょうか。私は、「教育課程を社会に開く」ことが、これからの教育の理念であるととらえました。
でも、「社会に教育課程を開く」ということはどのようなことなのかという疑問が湧きあがってきますよね。

◯その疑問にどう答えるかは、これからの学び(答申を読み込みながら自分流の概念化をする過程)の中で明らかにしていきたいと思います。一緒に学んでいきましょう。


◆これまでの部分を図解してみました。
でも、「図に表す」ということにはメリットのデメリットが潜んでいます。「図に表すことでことでわかりやすくなった」というメリットがある一方で、「図に影響され、本質が曖昧になる」というデメリットもあります。それは、平均点で子供たちの状態を判断してしまうと、一人一人の子供の実態がわからなくなるのと同じです。

◆下記の図解は「久木の現在の理解を図として表現してみた」という程度のものです。ぜひ、答申をご自分の感性で読み込み、ご自分の理解を下図に書き加え、「自分独自の『My図』」を創って頂ければ幸いです。その過程こそが、「主体的・対話的で深い学び」の実践者としての教師へと向かう教育者として大切な歩みではないかと思います。

◆「図解」(図に表す)とは、わかりやすい説明資料を作成するということではなく、自分の頭の中にある思いや考えを見える形で表すということです。別な言い方をすれば、自分の頭の中にある思いや考えを他の人々と共有し、よりよいものにしていく(これまでにないものをデザインしていく)という過程を大切にしようとする活動とも言えます。

◆そしてその先に、「デザイン思考の教育」が待っています。子供たちの人としての成長や、豊かな学び、学ぶことを心の底から楽しめる学校など、教育の原点に立ち返って考えてみれば、私たちは「実現したい教育の姿」を持っているはずです。その「求めている教育の姿を実現するために教育(教育活動)をデザインする!」ことこそが、日本教育デザイン学会が求めていることです。私たちは、日本教育デザイン学会の活動は「社会に開かれた教育課程」をどのようにデザインするのかという課題につながっていると思っています。