日本教育デザイン学会 ーJEDIー

2017年は教育界にとって「デザイン思考元年」!


明けましておめでとうございます。

昨年中は、本会の活動に際しまして一方ならぬご理解とご支援を頂きましたことに
心よりお礼申し上げます。
本年もよろしくお願いいたします。

さて、昨年末に「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」(答申(案))が中央教育審議会より出されました。多くの先生方が、「答申(案)」に何が記載され、中教審や文部科学省がこれからの教育をどのように描いているのかに関心を寄せ、答申(案)の読み込みに取りかかっていることと思います。
そして本年度末までには、次期学習指導要領が告示されるといわれています。

答申(案)は、A4で印刷すると243ページに及び、別紙46ページ、別添資料114ページ、補足資料241ページに及ぶ膨大な量となっています。読み込むにはかなりの労力が必要ですが、多くの教育関係者が全力を挙げて読み込まない限り、次期学習指導要領の改訂の意図を踏まえたうえで日々の教育を転換し、答申(案)が目指している「次代の教育」を実現することはできません。

「学びの地図」をめざした次期学習指導要領は、これまでの学習指導要領とは全く違う形式で告示されそうです。そのキーワードは、学びの地図を具体化した「社会に開かれた教育課程」です。各学校が、子供たちの未来を見据え、次期学習指導要領が示す「学びの地図」を参考に、どのような教育課程を編成するのか、その力量が今後問われることになります。

このことについて答申(案)では、次期学習指導要領が担う役割について次のように示しています。
▶引用 ——— p.1(答申(案))
 これからの学習指導要領等には、子供たちと教職員に向けて教育内容を定めるという役割のみならず、様々な立場から子供や学校に関わる全ての大人が幅広く共有し活用するこ とによって、生涯にわたる学習とのつながりを見通しながら、子供たちの多様で質の高い学びを引き出すことができるよう、子供たちが身に付ける資質・能力や学ぶ内容など、学校教育における学習の全体像を分かりやすく見渡せる「学びの地図」としての役割を果た していくことが期待されている。

このように、これから示される次期学習指導要領は、私たち大人が子供たちのためにどのような学びを実現していくのか、そのためにどのような考え方や行程を辿っていくのか、そのための地図「学びの地図」を意図して告示されると述べられているのです。そして、教育課程の編成を担うのが「カリキュラム・マネジメント」や「アクティブ・ラーニングの視点」です。

答申(案)は、各学校の教育課程の検討・改善に関して次のように求めています。
▶引用 ———  p.16(答申(案))
◯ 重要となるのは、“この教科を学ぶことで何が身に付くのか”という、各教科等を学ぶ 本質的な意義を明らかにしていくことに加えて、学びを教科等の縦割りにとどめるのではなく、教科等を越えた視点で教育課程を見渡して相互の連携を図り、教育課程全体と しての効果が発揮できているかどうか、教科等間の関係性を深めることでより効果を発揮できる場面はどこか、といった検討・改善を各学校が行うことであり、これらの各学校における検討・改善を支える観点から学習指導要領等の在り方を工夫することである。

◯ 新しい学習指導要領等には、各学校がこうした教育課程の検討・改善や、創意工夫にあふれた指導の充実を図ることができるよう、「生きる力」とは何かを資質・能力として具体化し、教育目標や教育内容として明示したり、教科等間のつながりがわかりやすく なるよう示し方を工夫したりしていくことが求められる。

このように、答申(案)では、各学校における検討・改善の努力に強い期待を抱いていることがわかります。そして、教育課程の編成に関して、次のようにも述べています。
▶引用 ———  p.9(答申(案))
子供たちがその長所を伸ばしつつ課題を乗り越えていけ るようにすることが重要であるが、教育課程の在り方を検討するに当たっては、加えて、 子供たちが現在と未来に向けて、自らの人生をどのように拓  いていくことが求められて いるのか、また、新しい時代を生きる子供たちに、学校教育は何を準備しなければなら ないのかという、これから子供たちが活躍することとなる将来についての見通しが必要となる。

答申(案)を読み込み始めると、今回の学習指導要領の改訂が、これまでの改訂とは全く違っていることに気づきます。そしてこの激変ともいえる変化は、「これまでの教育」では「これからの教育」を支えきれないという危機感があるように思います。

4年前に『特別支援教育の視点に立った学級経営~未来志向の教育デザイン~』という本を上梓しましたが、その「はじめに」に書いた冒頭の文章を思い出します。

▶引用 ———  p.1『特別支援教育の視点に立った学級経営~未来志向の教育デザイン~』
「教育は、私たち子どもに、どのような未来を用意してくれているのですか?」との問いに確信を持って答えることのできる大人は、はたして何人いるのでしょうか。
時代が激しく変化しているとき、子どもたちの未来を思い描き、十年後、二十年後を想定しながら、私たち教師は日々の教育に取り組まなければなりません。その時に重要なことは、教育の未来は、誰かによって準備されるものではないということです。
子どもたちと共に生き、子どもたちの成長を心から願い、「人を教え育てる」ことを生業としている教師こそが、目の前で必死に生きている子どもたちのために、教育を創り出そうとしなければ、教育の未来は豊かにならないのです。
喫緊の教育課題が山積し、その解決が容易ではない状況が続いているいまこそ、新しい視座を持って未来志向の教育をデザインしなければ、子どもたちの未来を豊かにすることはできません。

『特別支援教育の視点に立った学級経営~未来志向の教育デザイン~』は、十数年前から思い描いていた教育の姿を、その間の実践を踏まえ一冊にまとめたまとめたものですが、その思いや実践は次期学習指導要領と通じるものがあります。

「答申(案)」を前にして改めて思うことは、これからの教育者にこそ「未来をデザインする力」が求められているということです。
今後予定されている次期学習指導要領による教育の大変革は、いまから150年ほど前に「明治維新」という新たな時代の実現を願い、後の明治政府で中核となって活躍する多くの後輩を育てながら、夢半ばで死していった「吉田松陰」の思いを彷彿とさせます。そして、明治維新を目指した松陰たちが改革に命がけで奮闘した時代と現在を重ね合わせながら、「いよいよ『デザイン思考』の時代が到来した」との思いを強く抱きます。そして、今年がJEDIの存在価値を再確認できる年になることを願っています。

どうぞ、今年もよろしくお願いいたします。(JEDI会長 久木健志)