夢・希望を育む教育のデザイン (改 -JEDIー)

第67回イノベーティブ・セミナーではお世話になりました

11月9日(水)に実施した第67回イノベーティブ・セミナーでは、30名弱の先生方にご参加いただき、講演だけではなく熱心な協議や質疑応答が行われ、盛会のうちに終了することができました。
また、事務局の先生方には、いつもながら準備や運営で大変にお世話になりました。

さて、セミナーでは、
(1) VTRを利用した実際の授業を素材とした分析
(2) 授業分析の視座(行動観察記録シートの活用)
(3) 実行機能の意味とその役割
について、立教大学の大石先生から実際の授業のビデオをもとにご講義をいただきました。

まず最初に、若手の先生の授業VTRを素材として、先生の授業中の行動や指示、発問、そのときの配慮事項や効果など、実際の指導の中にある教育的価値について映像を通したお話がありました。参加者は、映像を通して教師の指導(行動)の意味と価値、指導に際しての重要なポイントなどを共有することができ、これからの教育指導に関する知見を得ることができました。

67kensyuu

(協議例:授業ビデオから)
◎「どの位置で子供たちに発問するのか?」
「すべての子供に学びを届ける」という、指導の基本を大切にした教師の行動を大切にしたい。机間指導中に教室の片隅で新たな発問をするのではなく、教室にいる子供すべてを見渡せ、子供たちの様子を把握したり、身振りや行動を把握できる教卓の所に戻り子どもの様子を見ながら発問したい。

◎「早く作業が終了した子供への配慮は?」
「子供たちが待ちの状態」をなるべく作らないように配慮する。そのためにも「この子供たちがやれることは何か」を常に考え、一時も無駄にしない授業作りを心がける。

◎「発言者に注目することを徹底できている背景にあるものは?」
教師が、学びの基礎・基本をしっかりと把握し、行動の手順を明確に示し、その行動の意味や価値をしっかりと子供たちに伝えているからできる。「発言者に注目する」などの行動は、取り組まなかったらできない行動である。

また、(2) 授業分析の視座(行動観察記録シートの活用)では、
・型を教えることは、「一人一人の子どもの学びを個別化する」際に重要であり、子供の個々の学びのスタイルを大切にすることにつながっていく
・「声を出しながら板書をする」など、教師は様々な行動をしながら指導をしているが、教師自身がその行動の背景にある意味や価値をしっかりと意識・把握し、指導に当たりたい。
・教師の行動を参考にしながら、「子供が自分に問いながら行動できる」ようになるとよい。
・「学び方の技術」を大人は持っているが、それはワーキングメモリーの力であり、メタ認知力である(学びの客観知)。例えば、「説明力がつく」ということは、短期記憶から長期記憶へと移ったことを示している。
・教師の指導は、行為の積み重ねであり、子供の力を伸ばすために「愛ある手抜き」を意図的に行う場面も大切にしたい。
・私たち教師の「無意識な教室での行動が、子供たちの学びに大きな影響を与えている」ことを、もっと意識しなければならない。
など、私たち教師が無意識に行っている行動に視点を当て、資料を基に「24の授業分析の視座」をお話しくださいました。

さらに、子供たちの「実行機能」を高めることに関して講義がありました。「子供たちの力が弱くなっている」ことを共有した後、
・「学び方のコツを学んだ子」は伸びる。それは、ワーキングメモリーを活性化させメタ認知の力を伸ばすことであり、「実行機能」を高めることに力を注ぐ
・「学び方のコツを学ぶ」ということは、子供に「学ぶための財産」を与えることでもある。ユニバーサルデザインに配慮し、学びやすい環境を作ることによって「子供たちが身につけている力を生かす」という経験を仕組んでいく
・そのためにも、クラスや子供の状態によって教師の行動を変え、子供たちに「自身で変わり伸びるチャンス」を与えることができる「教師の行動のチューニング力」が求められている。
・「子供が意味や価値のある行動を自然とできる」ことが理想型であるが、そのためにはまず「意識化して行動できる」ことが大切である。そして、行動を「言語化」することにより、メタ認知力を発揮させ「どう映っているかを意識させる」ことが重要である。
などのお話がありました。

最後に、「実行機能」を車に例え、ブレーキ、ハンドル、アクセルの役割を果たす「力」について学びました。
◎「実行機能」とは、「なめらかに実行する機能」であり、そのためには次の三つの力が必要となる。
① ブレーキ(行動を止める力)
② ハンドル(行動を切り替える力)
③ アクセル(やる気や意欲)
この三つの力を子供たちが持つことが「アクティブ・ラーナー」を育成することになるとのお話に、参加者全員がうなずきながらセミナーは終了しました。

(参加者の感想)
参加された先生方からは次のような感想が寄せられました。
・本日はありがとうございました。子供たちの学び方のコツとして、ワーキングメモリーのことや、実行機能のことについて学びました。授業を行う際、聞く態度、話し方(「はい」と返事をしてから話す)など、子供たちに授業の受け方を教えることはとても大切だと分かりました。子供たちの態度、先生の態度など、もう一度自分自身を振り返って、今日学んだことを、これからの指導に生かしていきたいと思いました。(小学校20代教員)

・子供の行動から読み取れることの多さと、それへの指導・支援の大切さを実感することができました。また、教師の言葉、立ち位置、子供への関わり方が子供に与える影響の大きさについても、先生の解説を聞くことで、より身にしみました。何気なく、無意識に行っている普段の行動の意味をもう一度意識して、子供にどう影響しているのか考えなくてはと思いました。本日はありがとうございました(一般参加30代)

・温かな言葉で、多くの発見と学ぶことを授けてくださいました。今、学習指導要領改定の過渡期で、先生方が何かを始めなければならないと考え、動き出しています。この転換期に私たちができること、やろうとしている目的をしっかりと見定めて、何に向かうべきか、何をしなければならないかを考えるきっかけになりました。ありがとうございました。今日学んだことを、中堅教員として伝え、語っていきたいと思います。(小学校40代教員)