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授業は変わるか? 課題解決型学習の授業法を開発へ、文科省が研究所を設置


新学習指導要領の目玉ともいえる「アクティブ・ラーニング」の実践に、文部科学省は慌ただしく動き始めています。

インターネット上に、次のような毎日新聞の記事が配信されています。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150108-00000039-mai-soci

記事によると、全国から指導力のある優秀な小中学校教員約10人を専属スタッフとして配置した「次世代型教育推進センター」を新設するとのことです。

でも、ここで求めている「指導力のある優秀な教員」とは・・・・?
新たな指導法を研究・開発するために、現在行われている指導方法に卓越した教員を選定し、新たな指導法を開発する・・・?

この手法って、どこか矛盾を含んでいると思いませんか?

全国から選りすぐられたすばらしい人材が「これからの指導法」を開発し、2020年(5年後)の新学習指導要領では、開発された指導方法に則った教育活動が、全国の小中高の各学校で展開されているという状況が日常になっているでしょうか?

5年後に、学校の教育が変わることを期待しつつ・・・そのために準備された時間は、わずか5年しかない!  ・・・大丈夫? との不安がよぎります。

わずか5年の間に、新しい指導方法を開発し、その意味やねらい、具体的な指導方法や指導技術を敷衍させなければなりません。また、新しい指導方法を実践するためには、学習環境の整備(教室の形態やタブレットなどのICT環境の整備)も欠くことはできません。
そして、最も重要なことは、すべての教育関係者はもとより、すべての保護者や国民に、「新しい学力観」を説明し、理解してもらう時間と手間が必要となります。そして、すべての国民に学力観の転換を求めなければ、新たな指導方法はその実をあげ得ないのではないでしょうか。

「総合的な学習の時間」が本格実施される矢先に、「学びのすすめ」が出され、総合的な学習の時間に対する取組が一気に萎んでしまったようなことだけは避けなければなりません。

アクティブ・ラーニングが目指している学習方法は、すでに小中学校で行われている指導方法の中にたくさん観ることができます。例えば、「算数科での課題解決学習における練り上げの活動」「理科の実験時における仮説実験授業的な学習」など、視点を変えれば「アクティブ・ラーニング」の原型ともいえる指導方法です。

でも、それらの指導方法に卓越していることと、新たな指導方法を開発できるということは同義ではありません。未来志向の力や、デザイン思考の力も必要になってきます。目新しいカタカナ言葉に翻弄され、新しい教育を行っているような「思い込み」というパラダイムに陥ることだけは避けたいものです。そのためにも、これまでの小中学校の指導の中に、たくさんアクティブ・ラーニングのねらいと同じような学習活動が展開されていることを前提に、「新しい学習方法」が生み出されることを願うばかりです。

これからの時代を生きていく子ども達が、「21世紀型学力」を身に付けなければならないことは誰もが認めることですが、格差が拡大し「学びたくととも学べない子ども」が存在しているのも事実です。理想を目指しつつも、厳しい現実を少しでも改善できる「新たな指導方法」を願ってやみません。