夢・希望を育む教育のデザイン (改 -JEDIー)

「一粒の種の神秘」から学ぶ!-2-


一粒の小さな種が、成長・発達のプログラムを秘めてこの世界に存在していることは、「『一粒の種の神秘』jから学ぶ!-1-」で述べました。

「一粒の種の神秘」から学ぶ!-1-

◆ 植物の可能性を、動物に置き換えて考えてみたらどうなのでしょうか?

uma誕生したばかりの仔馬は、誕生直後から立ち上がろうと頑張っては転び、それでも立ち上がろうとし続けます。そして、早くて30分、遅くとも1時間くらいで立ち上がります。

前足を踏ん張り、仔馬は誕生してから僅かしか経っていないにもかかわらず、自分の力で立ち上がり、誰から教えられることもなく母馬の乳に顔を近づけてオッパイを飲むような仕草をします。「立て」と言われなくても立ち上がろうとし、「さあ乳を飲みなさい」と言われなくとも母乳を探しに行く。このような仔馬の行動は、生まれ持っていた本能としか言いようがない動きです。

このような生まれて間もない動物の動きは、「人間(ヒト)」でも同じです。

生まれたばかりの赤ん坊を抱え、その両足の裏をそっと床につけると、まるで歩くような動きをします。これを原始歩行と言います。また、赤ん坊の手に指をそっと触れると思いがけない強い力で握り返してきます。母親の母乳を吸う力も持って生まれてきます。
このことからも明らかなように、動物もヒトも、すばらしい力をすでに持ってこの世に生まれてくるのです。

一粒の小さな種が生長・発達のプログラムを持ってこの世界に存在しているように、動物も成長・発達のプログラムをDNAの中に持ってこの世界に生まれ出でてきます。そして、適切な環境さえ整っていれば、外界(環境)の影響を受け、外界(環境)と折り合いながら、植物も動物も自ら持っている成長・発達のプログラムのスイッチをONにするのです。

◆ 環境は成長・発達の重要なファクター

肥沃で温暖な気候の中で育つ植物を、荒れ地で寒さが厳しい環境の土地に移植すると、やがて環境に適応することができず枯れてしまいます。
どの生命も、適応力に長けてはいますから、生育環境が多少変わっても適応することができます。しかし、極端な環境変化や必要不可欠な環境が欠如していれば、生命に決定的なダメージが加わります。適切な環境は、どの生物の成長・発達には不可欠なのです。

このことを、現在の子供たちの状況に置き換えて考えてみましょう。

kodomokadai

上の図は、文部科学省が各種委員会で提示している資料の一部ですが、
  ・不登校児童生徒の割合
  ・学校内での暴力行為の件数
  ・要保護及び準要保護の児童生徒数
など、どの指標も悪化していることを示しています。そして、この傾向はますます強まるばかりです。
先生方に、子供たちに対する印象をインタビューすると、「特別に配慮が必要な子供が確実に増えている」との意見を多く聞くようになりました。

文部科学省の資料や、多くの先生方の子供たちに対する印象の変化は、
  「子供の成育環境」が確実に悪化している!
ことの証左なのです。
そして、このような環境の変化が示している最も深刻なことは、
  「子供たちの成長がゆがみはじめている」
ということなのです。

文部科学省の資料や先生方の直感とも言える意見・思いは、「適切な環境があれば、どの子供も自らの内の備わっている成長・発達のプログラム」を持っているにもかかわらず、多くの子供が「育つ」ために必要な適切な環境を得ることができずに生活しているということを示しています。

「すべての生物は環境と調和し折り合いながら成長・発達している」ことを是とすれば、
  ・子供たちは、荒れ果てた厳しい環境の中で育つしかないという自分では変えようもない
   過酷な環境の中で適応せざるを得ない状況に追い込まれている
  ・その結果として、子供たちは本来持っていたプログラムを環境に適応できるように組み
    直している
としたら、私たち大人は、子供たちの未来に対して大きな禍根を残してしまっていることになります。

(次回は、「子供の成長・発達と環境」をテーマに考えてみましょう。)