日本教育デザイン学会 ーJEDIー

未来志向の教育デザイン-2-(はじめに②)


町田樹という若者が、24歳という若さで「フィギアスケート」の現役を退きました。
トップレベルのフィギアスケートの技量を持ちながら、次の自分の人生のために決断し、第一線を退こうとしています。
多くの不安があることは想像に難くはありませんが、町田選手は自己の強い意志と展望を確信しながら、研究者への道を歩むべく「極めて重い決断」をしました。

こんな強い意志を持った若者が生まれていることに驚嘆すると共に、これは教育(学校教育と枠にとらわれない広い意味での教育)の結果ではないかとの思いも湧いてきます。彼の言葉に触れるたびに、日本人の思いや心意気を感じるとともに、彼が新たな人生の道すがら、さらに多くの感動に出会い、すばらしい人生を営むことを願ってやみません。

さて、彼のような明確な目的意識を持った若者がどう育ってきたのか興味は尽きません。そして、多くの日本の若者が、町田選手と同じように「未来への希望と展望」を持って頑張ってくれることを願わない大人はいないのではないでしょうか。それは、一握りのエリートではなく、多くの若者が「生きる」ことを基本としながら、夢と希望を抱き、自らの人生と日本の未来を当事者として創りだそうとする若者の姿であり、そのような若者をいかに育てていくのかが、私たち大人や教師に問われています。

幕末から明治への時代の転換期における人々の活躍を調べれば調べるほど、本当に、いま進められている教育改革という名の教育施策は、この国とこの国を支えてくれる若者の未来を保障しているのかという疑問が大きくなります。

さまざまな教育改革のプランが提起され、教育現場はその指示に従い頑張っていますが、教育現場が抱えている厳しい状況の改善は遅々として進まず、教育格差は拡大していると感じている人の方が多いのではないでしょうか。

多くの人々が、教育の現状に満足はしていませんし、子ども達の教育に直接携わっている教師にとっても同じではないかと思います。それは、次々と打ち出される教育改革が、未来や将来を見据えた明確なビジョンと、その実現のために熟考された戦略のもとに展開されているという信頼感を持ちえておらず、むしろ状況を改善する事に追われ、当面の教育課題を小さな改善、後追いの些末的な改善で凌ぐといった教育改革の連続・連発が、今日のような教育の厳しく深刻な現状を作り出していると言っても過言ではありません。

いまこそ、「次の時代の教育への展望」と、その実現のための「戦略」が必要な時代なのです。
残念ながら、人口減少に代表される誰もが経験したことのない社会の変化に対応できる「正解」をもっている教育者や為政者はいないのです。多くの教育改革や教育施策が次々と打ち出されていますが、その実態は、教育現場の本質的な課題を見抜くことのないまま、確たる見通しをもたずに提案され、実施されています。

教育の本当の危機は、教育の未来への正解がないまま、進まざるを得ない厳しい状況への答えがないことと、それを認識することもなく、これまでの教育施策を強化しようとしている教育がいつまでも続いていることではないでしょうか。

教育に携わる者すべての英知を結集しなければならない「時」が訪れています。