日本教育デザイン学会 ーJEDIー

企業経営から学ぶ -経営とは?③-


「企業経営から学ぶ -経営とは②-」で、次のような「TESSEI」の記事を紹介しました。

[経営改革は、実行する「現場の実態」を把握して、初めて実現する]
活気が失われた現場を、海外視察団も絶賛する”最強の現場”へと改革したJR東日本テクノハートTESSEI。
「本社の言うことをよく聞いて、しっかりやるように」という上位下達の企業文化を一掃した同社の改革は、矢部氏(同社専務取締役)が「現場を知ること」から始まっている。「JR東日本から来たときは1カ月間の実習を受けて、現場のおばちゃんたちと同じ釜の飯も食べました」と語る同氏。その経験を通じて、現場がどれだけ大変か、一生懸命に取り組んでいるかを知り、「このまま埋もれさせるわけにはいかない」と感じたことが起点である。
現場の実態(感情や気持ち)を知らない中で、「職場活性を」「自律的に仕事を」と言ったところで誰も動かなかったであろうし、「何もわかっていない」という反発が出たであろう。
経営施策の浸透・実効が上がらない場合、それを作った経営・本社部門は「現場は危機感が無い」等という見なし方をすることが多いが、本当にそうだろうか。経営施策を浸透させ、改革を実現させるためには、まず、それを動かしていく「現場の実態」を知ることが極めて重要である事をJR東日本テクノハートTESSEIの事例は示唆している。

組織を預かり、目的を達成するために経営という仕事を進めるとき、部下が動いてくれなければ、経営どころではありません。管理する側こそが、上意下達の組織文化を一掃し、「現場を知ること」に徹しなければ、現場の実態も、現場で働いている人々の気持ちもわかりません。

管理する側が、現場に熱意を持ってコミットメントし、現場で努力している人を支えるという意識がなければ、組織には疲労感と疲弊感が充満し、やがて組織崩壊が始まってしまいます。

TESSEIが、海外視察団も絶賛する“最強の職場”へと改革できた背景には、「まず現場を知る」という経営文化があるからではないでしょうか。

では、教育の世界ではどうでしょうか。

教育現場は、改革の嵐に吹き飛ばされそうな状況に陥っており、改革の成果が実感できないうちに次の改革を求められるという状況が20年近く続いています。
改革の方向性や背景、改革の意図が明確に示されず、施策立案者の思いがしっかりと伝わらない状況が、改革の成功を遠ざけているように思います。むしろ、改革という名の下に、学校の自由裁量の余地はますます狭くなり、経営上の制約もきつくなっているのが現状です。そして、学校現場に残ったのは「多忙感」だけだとしたら、改革の成功など夢のまた夢になってしまいます。

学校経営が、単なる分担された任務をこなすための営みであり、管理・監督が主な仕事だとしたら、管理職を目指す若者も減少してしまうのではないでしょうか。

学校には、「教師」という職業に魅力を感じ、子供たちと共に頑張っている先生方がたくさんいます。その先生方の努力が無にならないような教育改革を願うばかりです。
教育改革の意図やその背景にある目的が理解できれば、どんなに厳しい教育課題であっても正面から向き合い頑張ってくれる先生方がたくさんいます。改革の意図がしっかりと伝わり、理解できれば、先生方は最高のパフォーマンスを発揮し、頑張り抜いてくれます。そして、徒労感や多忙感を「やりがい」に転換することができます。

多くの人々が、それぞれの立場で国・県・市町村の教育を担い、精一杯の活動をされていることは理解しつつも、「施策と現場の実態が乖離しているのではないか」との思いも抱きます。
どのような困難が予想されようとも、教育の最前線・教育の末端の現場で頑張っている教職員の思いをくみ取れないリーダーでは、次の未来を創造するために組織を動かすことなどできません。

また、企業経営者が、数年、十数年を見通して「経営戦略」を立案しているように、教育経営者はさらなる未来展望を行い「50年・100年」という時間軸を持って、教育施策を示さなければ、その地域の教育行政を担うという責任を果たすことはできないように思います。

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上図は、「経営とは②」でも示した図ですが、TESSEIの矢部さんは、企業における経営の実態として、上位の三つの繰り返しだと述べた上で、「我々はその下に、“仕事の改善力”“喜び・楽しさ・誇り”といったものを築いてきました。“ルール・行動指針”や“教育・訓練”は、順番としては最後。まずは、その下の土台を積み上げることに、この7年間取り組んできたということです。
と話されています。

「ブラック企業」という言葉がネット上で盛んに行き交っていますが、間違っても教育をブラック化させてはならないと思います。
TESSEIが最も大事にしている、「人々を慈しみ、大事にしていく」という企業理念こそが、教育の原点であり、教育経営者がそのことよりも、効果や効率を強く求めた瞬間に、教育は瓦解への一歩を踏み出してしまうのではないかと危惧しています。