日本教育デザイン学会 ーJEDIー

企業経営から学ぶ -経営とは?①-


教育の世界において「経営」という言葉は、どのように理解されているのでしょうか?
残念ながら、教育の世界では、管理・監督と結びついて考えられることが多いと思います。

もちろん、「経営」は管理・監督と無縁ではありませんが、教育を取り巻く環境が大きく変わろうとしているとき、経営≒管理&監督というとらえ方では、時代の変化に対応した教育を展開することはできません。

残念ながら、これまで公教育の世界(特に公立の小中学校)では、企業が当然のこととして持ち、活動し事業展開するための基本的な考え方である経営感覚や経営意識、経営手法が導入されることはほとんどなかったのではないでしょうか。
教育委員会事務局に勤務する先生方を含め、多くの学校の管理職層の方々は、法律をしっかりと守り、学習指導要領に則った教育をいかに実践するか、学力をいかに向上させるか、そのために教育課程や施設の管理、教職員の方々の監督をすることが「経営」だと認識しているように思います。

では、なぜ多くの学校の管理職層が、そのような意識を抱くことになったのでしょうか。
それは、明治以降、人口が右肩上がりで増加し続け、多くの人々が教育を受ける体制を整備し、教育力を向上させることが最大の目的だった時代が、これまでずっと続いてきたからです。
単一の目標(先行事例があり追いつき追い越すことが目標)の実現に、全員で取り組む教育が「これまでの教育」なのです。

しかし、100年続いた人口増の時代は終わり、これからの約100年は急激な人口減の時代が続きます。したがって、これまで教育界では疑うことのなかった「これまでの教育経営感覚」では、急激な少子高齢化が進展する時代に、十分な教育成果を上げることが難しくなっています。「単一の目標」しか視野になかった状況を、「複雑で複数の目標」へと転換し、難解な状況に的確に対応できる教育力が、これからの学校には求められていますが・・・・。

残念ながら、教育界には「時代に対応した経営感覚や経営手法」は存在していないのではないでしょうか。「守ること」が重視された教育経営を、「創造」を重視する教育経営に転換するための考え方や手法が、教育界には不足しているのです。

そこに、時代の変化を先取りして経営を展開し、企業の維持・発展に邁進してきた企業経営に学ぶ意味と価値があります。

予測できない急激な変化を乗り越えていくためには、「全員参加型」の教育経営が不可欠です。
下の図は、OBT人財マガジンが「株式会社JR東日本テクノハート」の専務取締役:矢部輝夫さんへインタビューされた記事を参考に、教育の世界で活用できるよう作成した図です。(詳細は下記アドレスを参照)
(http://www.obt-a.net/web_jinzai_magazine/person/2013/03/jrtessei.html)

genbaryoku1時代が激変するとき、教育委員会や校長をはじめとする教育経営者層が身に付けなければならない力は、時代の変化を読み抜く力と、多くの学校や先生方と一体となって目指す教育の実現に向けて「協働」し、未来を「創造」する力です。
「現場力」を向上させることができないリーダーは、これからの時代が求めているリーダーではありません。
「これまでと違う(管理・監督を中心としたこれまでの経営マインドとは違う)総合力」の有無が、これからの教育委員会や学校の管理職層には求められているのではないでしょうか。

具体的には、以下のようなことが教育委員会や「学校管理職には求められています。

[これからの教育委員会等に求められていること]
 ・変化を読み抜き、全員参加型の教育組織を創造する総合力
 ・学校や教職員からの提案を実現する力
 ・学校や教育現場で働く教職員を支援する力

[これからの学校管理職に求められる力]
 ・人々を慈しみ、大事にしていく経営マインド
(児童生徒を含めた「全員参加型学校経営」の実現)
   (教育風土の醸成、経営力の向上、教育文化の構築と発展)
 ・スタッフ、仲間を求め合う人間力
   (誰とでも協調し協働できるコミュニケーション能力)
 ・喜び、楽しさ、誇りを実感できる組織
 ・アクティブな参画意識
   (現在の教育界で最も欠落している意識ではないでしょうか。
    多くの先生方に「当事者意識」を如何に抱いたもらうのかが
    管理職の重要な仕事なのです)
 ・教育(仕事)への改善力
   (「ここを変えよう」「新たな取組を始めよう」といったマインドが
    なければ、教育現場は働きやすい職場にはなりません)
 ・ルール、行動指針の遵守と徹底
   (組織を維持するためにはルールや行動指針の徹底は不可欠
    ですが、ここから経営がスタートするとその組織は崩壊に向か
    います)
 ・教育、研修、訓練の実施
   (企業においても社員教育は重要ですが、特別な研修を実施
    するよりも、日常的に行われている研修[OJT]を重視した学
    校こそが、時代の変化に対応できる人財を育成できます)
 ・教育実践の充実
   (それぞれの学校、それぞれの先生方の教育実践をしっかり
    と把握することから」、次の経営手段や経営手法を導き出す
    ことができます。教育実践は「結果」ではなく、「課程」なので
    す。結果としての教育成果を吟味している限り、これからの
    教育の方向性を見出すことはできないのです)

時代が大きく変化するとき、意図的で継続的な組織としての教育機関である学校の重要性はますます高まると思います。
しかし、教育現場に蔓延しているのが「多忙感」や「徒労感」だとしたら、教育経営マインドを転換するしかその解決策はありません。
どのように法を整備し、どのように罰則を強化しその遵守や履行を求めても事故が絶えないのは、施策が実情・現実と齟齬の状態にあることの証左です。

もう一度「経営マインド」を見直し、経営スタイルを転換できる人財を育成することが「教育の未来の創造」に直結し、教育の明るい展望への扉を開けるのではないかと考えています。